久しぶりの投稿になってしまいすみません。
実は投稿をお休みしていた間、痔ろう(痔瘻)という病気の手術を受け、術後も療養に徹していました。
ですがこの度痔ろうが完治と相成りましたので、復活第一号の記事として、わたしの痔ろうとの闘いをつまびらかにお話したいと思います。
今痔ろうで苦しんでいる方や、まだ痔ろうを患ってはいないけれど、実は痔ろうになりやすい生活をしてしまっている方などなどに、この体験談が少しでもお役に立てれば幸いです。
そもそも『痔ろう』ってなに?
かつてのわたし同様、聞き馴染みのない方も多いと思いますので、まずは簡単に痔ろうという病気についての説明をさせていただきます。
痔ろうは別名『あな痔』とも呼ばれており、その名の通り肛門周囲の臀部に肛門とは別の穴が空いてしまう病気です。
痔ろうの進行を時系列で説明すると、まずはじめに誰もが持ってる肛門陰窩(いんか)と呼ばれる肛門内部の小さな穴に、下痢などによって雑菌が侵入して化膿します。
肛門陰窩は非常に小さな穴なので、膿は肛門陰窩から外に出られず、出口を求めて管を掘りはじめます。
時が経つと管の途中で膿溜まりができ、膿溜まりのある箇所は炎症を起こして腫れあがります。これを肛門周囲膿瘍といいます。
この段階でいくらかの人は病院へ行き、膿を出してもらう処置をしてもらい、処置後は腫れも収まっていきます。
ただこの段階で病院に行かなかった場合、膿は出口を求めてさらに外を目指して管を掘り進めます。
最終的には先ほど述べたように、肛門周囲に肛門以外の穴が出来、そこから膿が流れ出続けることになります。これが痔ろうです。
管が肛門陰窩から外部口まで繋がると、膿が溜まって腫れあがることはないですが、代わりに膿が延々と、じわじわと出続けます。
痔ろうの管は自然になくなったりはしないので、痔ろうになったら管を切除する手術を受けない限りは治りません。
しかも厄介なことに、痔ろうの管は放置すればするほど管の数が増え、複雑化していきます。
複雑化した痔ろうを切除するとなると、肛門括約筋を大きく切除しなければならなくなり、術後一生便失禁と付き合い続けなければならなくなる場合もあります。
そして痔ろうは、10年単位で放置するとガン化することもあります。
なので痔ろうは、患部の腫れや炎症が収まった後なるべく早く根治手術を受けることが望ましい病気なのです。
さて、ここまで痔ろうについてさらっと説明して参りましたが、ここからはわたしの痔ろう闘病記になります。
時系列でなるべくわかりやすく書いたつもりなので、是非最後までお読みいただけましたら幸いです。
臀部に走る激痛と大いなる判断ミス
はじまりは2年前、わたし自身この頃から痔ろうとの付き合いが始まっていたとは夢にも思っていませんでしたが、今振り返るとこの頃から痔ろうとの闘いはスタートしていました。
夏のある日のこと、わたしは臀部にしこりのようなものがあるなということに気付きました。
その時は少し違和感があるぐらいだったのでそのまま放置していたのですが、次第にしこりは痛みを伴うようになってきました。
1, 2ヶ月後にはしこりは腫れあがり、座っていられないほどの激痛を伴うようになってしまいました。
さすがにこれはまずいと思い、わたしは病院の門を叩きました。
―――皮膚科の。
そう、わたしは初動をミスりました。
この時に肛門科に行っていれば、もっと早く根治手術を受けることが出来ていました。
ただ、当時は痔ろうという病気の存在さえよく知らなかったので、「これは皮膚の炎症だ」と早とちりし、結果皮膚科を受診するという選択をしてしまったのです。
皮膚科では当然、肛門疾患の診断はおりません。
「痔ろうかもしれないから、肛門科に診てもらったほうがいいかもしれない」と言われることもなく、皮膚科では「膿が溜まっているから膿を太い注射で抜く」という対症療法的処置しかして頂けませんでした。
わたしは、皮膚科は悪くないと思います。
同じお医者さんでも皮膚科と肛門科は畑違いですから、痔ろうの可能性を見逃すのも致し方無いと思います。
あの時痔ろうという病気の存在さえ知っていれば、皮膚科ではなく肛門科を受診していたことでしょう。
この記事を読まれているあなたにおかれましては、もし万が一肛門周辺の臀部に激痛が走るようなことがあれば、皮膚科ではなく肛門科を受診していただけたらと思います。(激痛が起こらないのが一番良い未来ですが)
汚れる下着と穴の発見
皮膚科で膿を抜いてもらって以降は腫れも収まり、しばらくは何不自由ない平和な日常を過ごしていました。
ただ一つだけ、面倒なことが起こっていました。
注射に伴う出血や膿が溜まっていたことに伴う腫れは収まっていたのですが、下着が汚れるのです。
汚れるといっても、風邪を引いているときの鼻水のような膿っぽい色ではなく、黒っぽく薄汚れる感じです。
お風呂で身体をきれいに洗っているつもりだけど、加齢で前より汚れが出やすくなってるのかな?
この時はそう思って、そこまで大ごとだとは捉えませんでした。
汚れといっても薄汚れだし、洗濯すれば落ちる程度の汚れだったので、「歳のせいだ」で1年以上放置していました。
時は流れて2024年が明けてすぐ、状況が変わります。
シャワーを浴びていたある日のこと、わたしはかつて膿を抜いてもらった辺りの箇所に、小さな穴が空いていることに気付きました。
穴は皮膚組織で緩くふたをされているような状態になっていて、イメージ的には缶切りで開けたあとの缶詰みたいな形になっていました。
ただ、穴だってキズみたいなもの。放っておけば塞がるでしょう。
そう思い、その時もその痔ろうで出来た穴は放置しました。
まだわたしは、痔ろうという恐ろしい病の存在に気付いていません。
そうしてさらに1ヶ月の時が経過しましたが、痔ろうで出来た穴ですから、当然自然には塞がりません。
「こんな小さな穴が塞がらないなんてさすがにおかしい」と思ったわたしは、ネットで自分の症状について調べ始めました。
かくしてわたしは『痔ろう』という病気を知り、状況的に「これだ!」と思ったわたしは、ついに肛門科の門をたたくことになります。
2024年3月初めのことでした。
Hello, 肛門科. Yo, 根治手術.
「りおさーん、○番へどうぞー。」
さあついに初診です。
お医者さん「きょうはどうされました?」
りお「何か肛門の周辺に穴が出来てて、放ってても塞がらなくて、下着も汚れるしこれ『痔ろう』じゃないかな?と思って・・・」
お医者さん「あー、これ痔ろうですねー」
りお「やっぱりそうですか・・・」
お医者さん「8日間の入院・手術だから術前検査の日程を受付で調整して」
りお「わかりました」
というわけで、はいやっぱり痔ろうでした。
術前検査として大腸内視鏡検査とX線検査、血液検査をするとのことなので、その日は術前検査の日程を予約して帰りました。
術前検査前日と当日は、食事制限がありました。要するに繊維質の食材がNGで、飲み物もお水か緑茶限定になりました。
食事制限をこなして迎えた術前検査当日、わたしは検査前に問診票を書き、看護師さんに渡しました。
問診票の内容を見て、わたしが性同一性障害を抱えるMTFだと悟った看護師さんは、他の患者さんに会話の内容が聞こえないような部屋で神対応をしてくださいました。
神対応の内容としては、現状もし8日間の入院になった場合、8日間他の男性患者さんと一緒の部屋になってしまうので、それはわたしにとってもつらいだろうし、他の男性患者さんも嫌がる人がいるかもしれないから、先生にもう一度診てもらって日帰り手術に出来ないか相談しませんか、という提案でした。
もしこれで手術が日帰りになるのなら、わたしにとって良いことですし、他の患者さんに迷惑もかけなくて済みます。わたしは首を縦に振りました。
そしてわたしは再度、先生による診察を受けました。
外来のお医者さんに加えて、他の先生より上手く手術できるらしい先生にも診てもらい、その先生から「これなら日帰りで出来るよ」というゴーサインが出たので、わたしは長期入院なしの日帰り手術ということになりました。
日帰り手術の場合、(賛否両論ありそうですが)大腸内視鏡検査とX線検査がいらないらしく、その日は血液検査だけ受けて帰りました。
血液検査を受けた数週間後の3月25日、ついにわたしは手術を受けることになりました。
時々痛い局所麻酔と迫りくるもの
午前中に手術、昼過ぎには退院というスケジュールで、わたしは痔ろうの手術を受けました。
受付に手術同意書やら家族構成を書いた紙やらを渡して、まずはじめに外来の診察室で手術の説明を受けました。
その後は病室へと案内され、手術まで病室で待機しました。
そしてついに手術。
看護師さんのお迎えが来て、わたしは歩いて手術室へと向かいました。
うつ伏せになって手術台に乗り、肛門科用と思われる特殊な手術台で下半身だけは90度曲がって立位みたいな状態になりました。
最初に何箇所かに局所麻酔を打たれ、麻酔が効いてきたところで執刀が始まりました。
切られてる感覚は、なんとなーく触られてるな程度の感覚で、基本的に痛みはありませんでした。
ですが、本来下半身麻酔でやるところを局所麻酔です。激痛とまではいかないまでも、たまに痛いと思うことはありました。その時は都度局所麻酔を追加してもらい、痛くなくしてから手術が続行されました。
ただ、触られてる感覚は軽くある局所麻酔。わたしの痔ろうは肛門から見て身体の前側に出来ていたので、手術中は絶えず肛門から見て前寄りを弄られる感覚がありました。
そうなると、こみ上げてくるものがあります。
そうです、尿意です。
尿道に近いところを刺激されることで、尿意が迫ってきました。
わたしは必死に我慢しました。痔ろうの手術で尿失禁なんて絶対したくありません。必死で我慢しました。
最終的に尿失禁することはなく、無事手術は終了。感覚的には手術時間は30分ぐらいでした。
まだ麻酔が残っていることもあって、術後の痛みはほとんどなく、抗生剤の点滴を受けながら1時間ほど病室で横になり、点滴後は痛み止めと抗生剤を貰い、退院しました。
地獄の1週間、2度の不良肉芽、そして完治へ
手術を受けた当日の午後は、麻酔が残っていたこともあり、外食ができるくらいには調子が良かったです。
ですが、その日の夜以降は地獄の1週間でした。
患部が痛くて、座るのはもちろん、横になるのも姿勢にかなり気を遣わないと痛みが走るという有様でした。SNSでもフォロワーさんにかなり心配されたほどです。
「この痛みがいつまで続くのだろう」と、術後数日は途方に暮れたものです。
術後5日目に受けた術後最初の診察で、「痛くてつらい」と気持ちを吐露したところ、「まだ5日しか経ってないですからそうですよね」とフォローされました。
わたしはこのお医者さんの言葉に、少し安心しました。「こういうものなんだ。これで順調なんだ」と思えたことで、療養に前向きになれました。
まだまだ傷口は塞がっておらず、肛門内の術創からは浸出液、外側の傷からは出血が続いている状況でしたが、順調だという先生の言葉を胸に、療養に徹しました。
術後1週間も経つと、寝るのは全く問題がなく、円座クッションがあれば座っていることも苦ではないくらいには回復してきました。
術後5日目の診察から1週間後、そこからまた2週間後と、わたしは診察を重ねました。
ちょうどその診察、術後から数えて3週間と5日後の診察で、わたしの肛門内である異変が起きていました。
どうやら不良肉芽と呼ばれるものが傷跡に出来ていたらしく、先生はその場でその不良肉芽を摘出してくださいました。これで傷口がきれいに塞がるとのこと。
その次の診察は、4週間後となりました。この時点で外側の傷からは出血は止まっており、浸出液が出続けている状態でした。
1週間、また1週間と時は流れていきました。
でも、いつまで経っても外側の傷からの浸出液が止まりません。
術後からずっとオムツ+ガーゼの生活を続けていたのですが、外側の傷からの浸出液が毎日オムツを真っ黄色に染める程、かなりの量の浸出液が出続けていました。
そして4週間が経ち、病院へ。先生に「浸出液が止まらないんです」と打ち明けました。
診察の結果、なんと外側にも不良肉芽が出来ていたようで、この不良肉芽が傷口が塞がるのを妨げていたとのことでした。まさか2度も不良肉芽が出来るとは思いませんでした。
2度目の不良肉芽もその場で切除してもらい、経過観察のために1週間後に再度診察を受けることになりました。
不良肉芽を取ってからの傷口の治りは、私の想定以上に早かったです。
数日後には外側の傷から浸出液が出なくなり、ガーゼもオムツもほぼ真っ白で過ごせるようになりました。
そうして迎えた1週間後の診察、わたしは「浸出液が外からも中からもほとんど出なくなった」と伝え、先生から「外も中も綺麗に治ってるので、(通院)終了でいいと思います」というお言葉をいただくことができました。久々にとても嬉しかったです。
おしりの違和感はすぐ肛門科へ
以上がわたしの痔ろう闘病記です。
最後にわたしがお伝えしたいことは、おしりに違和感を覚えたら、恥ずかしがらずにすぐ肛門科を受診した方がいいですよ、ということです。
内科や耳鼻科と比べたら、たしかに肛門科は心理的ハードルが高いと思います。
ただ、放っておくとどんどん悪化する場合も少なくありません。痔ろうなんかがまさにそれです。
痔ろうは手術しなければ治りませんが、いぼ痔や切れ痔は市販薬で治ることもあるかと思います。
ただ、市販薬で歯が立たないなら、肛門科をなる早で受診した方が、その後の人生のQOLが上がること間違いなしです。
たかがおしり、されどおしり。
限りある人生、一日でも体の不調で悩む日を減らして、楽しい人生を謳歌しましょう。
それでは、きょうはこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました!